大会結果

2024
東日本ジュニア
体操競技選手権大会

岩手県・花巻市

スコア・得点表

東日本Aクラス

個人総合 男子 女子
種目別 男子 女子
Eスコア賞 女子

東日本Bクラス

個人総合 男子 女子
種目別 男子 女子
Eスコア賞 女子

東日本Cクラス

個人総合 女子
種目別 女子

審判長総評(男子)

男子審判長

千葉 一正

適用規則

● Aクラス決勝
・(公財)日本体操協会制定2022年版男子採点規則
2022年版中学校男子適用規則を適用(U-15)
※跳馬は1跳躍
・花丸ルール適用

● Bクラス決勝
・2022年度体操競技男子小学生規定演技
・花丸ルール適用

採点の方向性

● Aクラス
適用規則のねらい通り「美しい体操」「基本の習熟」を念頭においた採点を行う。

● Bクラス
規定演技で求められているねらい通りに「美しい体操」「基本技の習得」を念頭においた採点を行う。

所感

今年で、Bクラスの規定、AクラスのU-15を適用して3年目になります。
規定の捌き方やU-15ルールの理解は浸透してきた感じを受けます。
気になるのは、今年の傾向としてはBクラスの出場者が少なくなったことです。
例年、4日間で開催していたが、今年は3日間と短縮しました。
1〜2班くらいは少ないと思います。
少子化により競技人口の減少も考えられますが、Bクラスの規定が難しいので出場を見送った、
または、Aクラスに変更したとの声も聞こえてきました。
規定には、基本となる重要な要素が多々含まれています。
DスコアがあるAクラスに進む前に、日本の伝統である「美しい体操」を継承するためにも、ぜひ、この規定に取り組んでほしいと思います。なお、今年の報告に、各種目の「今後の課題」を載せました。審判目線で気がついたことを記載しております。
昨年度やよく言われている課題と同じことも出ていますが、今後の指導に役立てていただき、選手の伸長の一助になればと思います。

◆ ゆか

● Bクラス(最高得点9.6)
区分Ⅲ〜Ⅴで行う、左右開脚の柔軟性や倒立静止など時間を有効的に使用し演技をしていました。一方で、区分Ⅱ・Ⅴのシリーズではリズミカルな蹴り返しのあるタンブリングで実施する選手が少なく、Ⅱでは両足ジャンプ伏臥、Ⅴの後方宙返りは、高さ不足を感じました。区分Ⅲ〜Ⅳではマンナ経過振り出し前支持のマンナの腰の位置が低いため脚上挙のような姿勢になり減点しました。また、後転倒立ひねりの倒立位逸脱は多くの選手が減点の対象になっていました。演技全体を通して、この2箇所は、ほとんどの選手が減点が多いところでした。
評価した点は、タンブリングシリーズの蹴り返しによるスピード加速、宙返りの高さ、動きのシリーズでの倒立や柔軟での時間の使い方や静から動の見せ方などが評価できる演技でした。

● Aクラス
・Dスコア最高得点 4.3
・Eスコア最高得点 8.9
組み合わせ加点やビッグタンブリングを組み込み、Dスコアを高めている選手が多く、高校生の演技と遜色ないレベルの高さを感じましたが、多くの選手の着地姿勢について気になりました。腰が低い着地、上半身を屈むような頭を低くした姿勢での着地などが、それに該当します。着地の際の1歩の脚幅(ほぼ中欠点)。着地の先取りなども重要なポイントになります。日頃の練習から意識して練習してほしいと思います。

■ 今後の課題
2025年から採用される新しい一般の採点規則(U-15 ではなく)では、終末技に2回宙返りを要求しています。これから雄大性があるタンブリングが求められる方向性になる可能性があると思います。
将来、雄大な2回宙返りや3回宙返りを実施するためにも、高さがある宙返り、そして、良い姿勢で安定した着地で実施できることが課題になると思います。

◆ あん馬

● Bクラス
・最高得点9.90
旋回10周と単純な規定です。姿勢の美しさや旋回の質が得点に大きく影響します。雄大性、姿勢の美しさなど理想像を目指して練習してほしいと思います。
今回は、つま先まで意識している選手が少ないように感じました。つま先だけでなく、指先までの伸ばした旋回を意識してほしいと思います。

● Aクラス
・Dスコア最高得点3.8
・Eスコア最高得点9.4
基本的な技の交差と旋回の習得が少し雑に感じました。雄大に旋回している選手はごく僅かで、交差の大きい選手はもっと少ない実施でした。

■ 今後の課題
Bクラスは、旋回の姿勢が気になりました。つま先、足の指先まで美しさを意識した姿勢、振り回したスピード感がある旋回、そして、支持手に体重が載ってコントロールされている旋回を目指してほしいと思います。
Aクラスも、やはり旋回の質を高めることが大事だと思います。どうしても、ある程度できてくると技重視になり Dスコアを0.1でも高めようとする傾向が見られます。
そのため、Eスコアを下げてしまう実施が数多くありました。やはり、このジュニア期は Dスコア2.5くらいの構成にして、Eスコア9.0以上を目指す Eスコア重視が良いかと思います。もう一点は、終末技の下向き下りの大きさ不足が気になりました。
大きさを出すのは難しいと思いますが、大きくしようと表現する、その意識は、将来の演技実施に影響を与えると思います。
今回は、大きさを出そうと意識した実施はほとんど見られませんでした。

◆ つり輪

● Bクラス
・最高得点 9.85
気になった点は、開脚前挙支持〜伸腕屈身開脚力倒立〜支持で肘曲がりが多く見られた点です。
また、後ろ振り上げりで支持する際の肘曲がりなどの姿勢不良が気になりました。
前方懸垂回転、後方懸垂回転などの振動系は大きさを求めていたが、終末の宙返りの高さが不十分な選手が多く見られ、倒立も不安定な感じを受けました。

● Aクラス
・Dスコア 最高得点 3.70
・Eスコア 最高得点 8.75
多くの選手が伸腕屈伸力倒立または、屈腕伸身力倒立を実施していた。
その実施減点が多いことが気になりました。
また、脚前挙の姿勢、静止時間が疎かになっているようにも感じました。
2秒(0.2秒)をちゃんと止める意識を高めて実施してほしいと思います。

■ 今後の課題
多くの選手が伸腕屈伸力倒立または、屈腕伸身力倒立を実施していた。その実施減点が多いことが気になりました。また、脚前挙の姿勢、静止時間が疎かになっているようにも感じました。2秒(~2秒)をちゃんと止める意識を高めて実施してほしいと思います。
脚前挙の姿勢と倒立の姿勢、そして、安定性だと思います。今は不安定でも、将来的に、中国の選手のような安定感がある倒立を目指してほしいと思います。そのために、毎日の練習で、輪の開き方やつま先(指先)まで意識した練習などが重要なポイントになるかと思います。急によくなる訳ではないので、コツコツと毎回、意識して練習に取り組んでほしいと思います。
その他、毎年課題になるのがアップ時間です。ぶら下がる時間、吊り輪を止める時間のほか、アップの時に演技を通してしまう選手もおり、遅くなる傾向が顕著に出ていました。なかには、一本アップができるのは当たり前だと思って、ゆっくりアップをする組もありました。
毎年、出てくるアップ時間の課題は今年も前に進みませんでした。

◆ 跳馬

● Bクラス
・最高得点9.775
規定は、前転跳びと運動として単純ではあるが、細かく見ていくと様々な点で減点の対象があります。
着手時に腕がまがる、肩が前にでる、入りが高くなってしまう、入りで腰が曲がる、胸が落ちていた姿勢不良が見られたなどである。
高得点の選手の良いさばきは、助走にスピードがあり、踏切板を蹴る前の準備姿勢から、蹴った後、着手から離手までのリズムが良く、突き離した後の空中姿勢に美しさがあり、着地の準備や着地まで意識していました。

● Aクラス
・Dスコア最高得点 4.0
・Eスコア最高得点 9.7
側転とび系は 64実施
(ツカハラ 6名、屈伸ツカハラ 24名、伸身ツカハラ 17名、カサマツ 5名、伸身カサマツ 12名)
前転とび系は 48実施
(前転とび 9名、前転とび1回ひねり 1名、前転とび前方かかえ込み宙返り 12名、前転とび前方屈伸宙返り 2名、屈伸クエルボ 5名)
技の習熟度や完成度については、前転とび系の技を実施した選手の方が高かった。
特に、突き手からの上昇動作が見える高さのある跳越は前転とび系の方でした。
着地を止めた実施は、前転とび系が9名であった。側転とび系は4名であった。
すべての選手が意識した先取りが見られ、着地への準備ができているため、安定した着地に結びついていました。
しかし、姿勢の減点が多くあり、前転とび前方かかえ込み宙返りの姿勢不良、第一局面で膝が曲がったり、跳馬から手が離れる前に膝を曲げてしまう選手や前転とび前方屈伸宙返りの第二局面において、膝の曲がる選手も多くいました。その姿勢不良が気になりました。

■ 今後の課題
Bクラスは、着手面を見たまま離手せず、すぐに頭をしまう動作(顎を引く)により、浮きが見られない選手が多かったことです。
Aクラスは、側転とび系の技では、着手時の脚開きで減点される選手が多くいました。突き手から上昇運動の見える実施はほとんどなく、減点の対象になっていました。伸身と屈伸のあいまいな姿勢も多く、つま先が曲がったままの実施がほとんどで、姿勢の美しさを意識してほしいと思いました。回転不足により着地が跳馬側に1〜2歩動いてしまう選手も非常に多くいました。高いDスコアを実施することは決して間違いではないが、ジュニア期で習得すべき基礎基本は、U15ルールの定める加点にあると思います。Dスコア4.0を獲得することだけに執着せず、0.5の加点部分を突き詰めることこそ、将来の一般規則でも通用する雄大で美しい演技に繋がるのではないかと思います。

◆ 平行棒

● Bクラス(最高得点9.80)
規定で減点が多かった点は、開脚前挙からの振り下ろしにおいて、チッペルトのようなさばきではなく、腰をとっていたり、スイングの勢いを制御できず、け上がりが不安定になる点や、静止すべき部分で静止時間不足などでした。高得点が出た選手は、4つの静止が求められる部分について、動的な運動から静止への明確なさばき、スイングにおいて、力強い振りおろしからの大きな前振りが見られました。
● Aクラス
•D スコアの最高得点3.6
•E スコアの最高得点9.45
倒立において、体操の基本となる、まっすぐな倒立姿勢の選手が少ない印象を受けました(10名程度)。脚前挙の姿勢で、つま先まで意識した美しい姿勢や振動からピタッと止めたという印象の実施は少なく、力倒立で勢いを使う選手や肘を曲げて実施する選手もいたことが気になりました。また、ツイスト、ディアミドフ、車輪、チッペルトなど最後の倒立に技で実施したものの最後の倒立が不安定な実施、または倒立にならない実施が多くありました(ツイストを除く)。今回は、ほとんどの実施で減点しました。

■ 今後の課題
倒立、脚前挙、力倒立などの基本技で姿勢の減点がない演技を目指してほしい、そして、安定したスイングを身につけ、技を実施した際に、倒立で終わる技は、安定した倒立でおさめることができる実施を目指してほしいと思います。

◆ 鉄棒

● Bクラス
•最高得点9.40
ツイストの連続で減点される選手が多く、2本目のツイストを跳んで実施している選手は60〜70%でした。ひねった後の姿勢で、姿勢が美しい選手は高得点を取る傾向が見られました。宙返りの実施は良かったが、高さがある選手は少なく感じました。

● Aクラス
•E スコア最高得点9.4
•D スコア最高得点3.5
ツイスト、移行が倒立におさまる選手が思ったより少なく、40%くらいの実施でした。
Dスコアを上げるため、さまざまな技を実施していますが、基本的な技で減点されない選手は少なく、捌きでアピールできる実施も少ないと思いました。

■ 今後の課題
車輪、ツイスト、移行など基本技の姿勢で美しさに重点をおいてほしいと思います。また、多くの選手が手放し技を実施したが、姿勢などの減点が多い選手がほとんどでした。手放し技を実施することでグループ得点0.5がもらえるための構成に入れていると思われるが、難易度の高い技を入れたり、技や手放し技を入れてDスコア重視で競技に臨むのか、技を最小限にして、手放し技なども入れないで減点を少なくしたEスコア重視で臨むのか、選手の競技レベルに応じた検討が必要だと思いました。選手の将来の良い実施や美しい姿勢の実施につながる選択をしてほしいと思います。

審判長総評(女子)

女子審判長

吉村 佳子

適用規則

● Aクラス
・2022年版変更規則Ⅰ 情報33号まで
・ハナマル、E得点賞

● Bクラス
・2022年版変更規則Ⅱを一部変更
・ハナマル、E得点賞

● Cクラス
・2023年制定ジュニア連盟Cクラス規定演技
・ハナマル

審判会議について

採点にあたっての統一見解
日本体操協会2024年採点指針のポイントである膝、つま先の緩みがなく手先足先までコントロールされた美しい姿勢での演技、欠点のない正確な技の実施を評価することと、新たに全日本ジュニア連盟から通達した「ABCクラス採点指針」「ハナマル判断基準」について確認をしました。
AクラスはDスコアの高得点を求めてくる方向の中で、より正確な実施の上での美しさの評価を忘れないで採点をしてほしいこと。
Bクラスは昨年度からルール及び参加対象年齢を変更したが、今まで通りに基本技の正しい習得と正しい美しい姿勢が大事なことは変わっていないこと。Bクラスは参加対象年齢の幅が広がったために、身体条件での大きさの評価が混乱しないように伝えました。
Cクラスは2023年制定の新しい規定演技となったが、正しい姿勢と美しい演技を求めることと、要素変更を確認しました。
ハナマルルールはジュニア連盟の採点上の重要項目です。今年度よりABCクラスの判断基準を新たにしました。
3項目の判断基準を常に念頭におき、0.1から最大0.3の加点となるため、質の良い技や捌きには積極的に採用する採点をお願いします。
最初の班から最終班の選手まで各種目の評価基準が変わることがないように常に確認をしていますが、今回はBクラスが2日間開催になりました。基準を明確にすること、決勝大会に出場できる選手は上位12名の熾烈な戦いになることにご理解をお願いします。

所感

参加人数はAクラス72名で、昨年より46名減、Bクラス105名で12名増、Cクラス47名で28名減となりました。
Bクラスはルールが変更(規則Ⅱ(一部変更))で参加対象年齢が中学校3年生まで認められたことにより、参加人数が2023年は50名増えましたが、更に今年も増えました。
残念なことに、A・Cクラスの人数が少なくなりました。
Cクラスは今年からの新規定ということもありますので、今後たくさんの参加を期待します。
今回は各クラス1位、予選通過ラインの得点と平均得点を算出してみましたので参考にしてください。
Cクラスの平均台の新規定演技は美しく、正確な演技が要求されています。
正確な演技をするために丁寧に演技に取り組む姿がみられましたが、約50%の選手が演技の制限時間を越えていました。
1分40秒以上になる選手もいました。
丁寧に動く中にもリズムにも取り組んでほしいと思います。

総評

今年からABCクラスの採点指針をお伝えしています。
「美しい体操、美しくなければ体操ではない」をメインテーマとして、

〇より高く、より美しくを念頭に体操の基本を大事にしなければいけない。
〇美しい体操が、美しい立ち姿勢から表現されるように「真っすぐに立つこと」「まっすぐな倒立」が基本であること。
〇花丸も各種目最大0.3の加点に変更され、審判員は明確な基準のもとに加点を行えるように、採点をしなければならない。

ジュニアの時期から、ジュニアの時期だからこそ「美しい体操」に対する意識を高め、正しい基本技術によって技に繋がるように求めています。
跳馬のハナマル加点「減点のない着地」で0.1の加点ですが、これは練習から着地の意識を高めてほしいことを求めています。
着地がギリギリで着地の準備局面が見られない等、様々な着地がありました。

最後に今年も指導者の方々にお願いがあります。
ゆかの伴奏音楽のCDはとても汚れている選手が多いです。
またUSBは1個に1曲です。
携帯電話の音楽アプリで機器への接続ができないことは、ご理解ください。
よろしくお願いします。
2024年は岩手県体操協会の方々のご協力で大会運営もたいへんスムーズに終了しました。ありがとうございました。
会場の花巻市体育館のお隣に花巻東高校があり、グラウンド裏で大谷翔平選手の記念モニュメントを自由にみられ、選手のみなさんも花巻パワーをいただき、これからも頑張ってください。

2024東日本ジュニア大会から決勝大会通過の個人総合得点
優勝者得点 予選通過ライン(12位)
得点 平均点 得点 平均点
Aクラス 53.00 13.250 48.65 12.163
Bクラス 52.80 13.200 48.20 12.050
Cクラス 37.70 9.425 32.80 8.200

花巻東高校MLB選手モニュメント
写哀提供:吉村佳子